第3回 住宅の名わき役”床・壁・天井”

家の中で存在感を際立たせているのは家具ですが、家の中全体のイメージを脇からささえているのは”床・壁・天井”です。
家を建てる際に行われる施工会社との打合せで、女性の皆さんが一番楽しそうにしているのも「内装」について決めるときです。今回はそのお話をしていきましょう。

最近もっとも多い色の組み合わせは床が白っぽく、壁と天井も白、部屋のドアの色だけが濃い茶色という組み合わせです。これは今の流行です。家具屋さんの家具もこげ茶色の家具が多く並んでいるのに気づくでしょう。
白い床は床の面積を広く感じさせてくれますし、壁も白なので白い空間にごげ茶色の家具がきりりと引き立つというわけです。ただ、床に存在感がないために軽い印象になってしまいがちなので、この点を配慮したいところですね。

人気の床材、メリットデメリット

徐々にですが床の材質にこだわる方が増えていて、ウォールナット(クルミ材)やメープル(カエデ材)を希望する方もいます。ナチュラル志向のお母さん方には人気が高いのですが、無垢の床は価格も張りますがお手入れも大変でワックスがけが必要不可欠です。

最近は、高級床材に似せたノンワックスのフローリングが、今各社から発売されています。忙しい世の中の情勢にピッタリな優れもので、床に少し存在感を持たせると家の中の印象ががらりと変わり落ち着きのあるリラックスしたムードに。これは個人的にオススメです。

壁にアクセントを入れて空間を引き締め

さて、家の中で一番面積の多いのが壁面です。でも、ドアや窓が付いたり家具の裏側になったりであまり表に出てきません。壁に色を積極的に使うよりも、壁は白、というのが基本のようです。
ただ1点、白は白でも赤味を帯びた白や緑味を帯びた白など白にも色々あるということを覚えておいて下さい。もし床をウォールナットのクルミ材にしたら赤味掛った壁紙かもしくはグレー味掛った白がいいでしょう。クリーム掛った白はせっかくの床の色を損なわせてしまいかねません。

部屋に変化を持たせたり、心理的にエリアを分けたい時には、壁面にアクセントをつけます。強い色を使いたい時には面積を絞って◎。柄物を使いたい時は寝室やトイレなどプライベートな空間に使うのがいいでしょう。ただし狭い空間に大きな柄を使うと狭く感じたり、せっかくの素敵な柄が活きなかったりということがありますので気をつけて下さいね。
アクセント壁紙は白いベースの壁紙を選ぶのとは違って、個人の好みがはっきりするところです。家族で意見が合わないということが多く見受けられます。洋服と違って家はみんなでイメージの違うものを主張できるところではありませんし、1軒の家は1つのイメージでまとまっている方が、住みやすいと言えます。意見が合わなくなったら、だれか1人のイメージで進めていく事が安定したいい家を作る秘訣だと思います。

天井は壁紙と同じでシンプルに

天井は壁の色と色味を合わせて壁よりも薄い色を選ぶのが基本です。理由は簡単。直接の光が当たりにくいため、暗くなりがちだからです。昔の天井は飾りが付いたり模様が付いたりしていました。現在の住宅はシンプルが基本ですので天井に模様を付けるイメージは似合いませんし、模様や凹凸は返って天井を低く感じさせてしまいます。広がりを出したいなら壁と同じ物を選ぶといいでしょう。

壁紙も色や柄だけでなく、汚れ防止や空気のにおいを取るなどの機能を持たせたものも多く発売されていますので選ぶ基準も広がっています。床・壁・天井の材料を選ぶ時注意していただきたいのは、置く家具のイメージや色、また窓に付けるカーテンやシェードも忘れないでいただきたいということ。壁紙だけが独り歩きしないようにいつも家全体の事を意識することをお勧めします。

川岸 敦子

プロフィール
川岸 敦子 / 二級建築士

短大卒業後、コンビニエンスストア本部に入社。インテリアの仕事をめざして退社後、町田ひろ子インテリアコーディネーターアカデミー小樽校に入学。インテリア関連の会社を経て1991年に独立。母校にて、コーディネーションの講師を務めながら、戸建住宅、マンション、ホテル等のインテリアデザインの仕事に従事し、1997年インテリアデザイン会社 有限会社ブランを設立。住宅、マンションのモデルルーム、医療関係のインテリア等に携わる2001年 二級建築士を取得。小学3年生の子どもを持つ母親でもある。

イントロダクション
昨年末、事務所の引越しをしました。11年間ため込んだ、物・物・物の数々を整理しながら、次の場所では自分の為に空間を作ろうと決めました。一番最初に考えたのは、仕事をする時の”ここち良さ”。機能性はもちろん、美しさを前提に。インテリアという自分の仕事を見詰め直す、いい機会でした。このコラムでは、皆さんと一緒に”ここち良さ”を考えて行きたいと思います。