第4回 住宅購入資金調達に関する税金あれこれ

マイホームは一生に一度、といっても過言ではないほど高価な買い物ですので、その資金調達には苦労されている方も多いのではないでしょうか。
銀行などの金融機関で住宅ローンを組むのが主な方法ですが、大手企業さえ倒産する時代ですので貸し手の金融機関の審査もなかなか厳しく、予定していた額を借り入れできないということもあるようです。
ところで、最近の若い方は、実家の両親を扶養している方は少数派で、むしろ、就職してからも両親と同居し、給与から生活費を支出することもなく、半ば両親に扶養されている方は決して少なくないようです。かつては、「パラサイト」なる言葉も流行していたほどでした。さらに、結婚して独立した所帯を持って、子どもができてからも、双方の実家の援助を受けて生活している家庭も見受けられます。このようなご時世ですから、若い夫婦が一念発起してマイホームを購入というときにも、実家の援助を受けるケースは多いでしょう。
ただ、その援助の方法にも、気をつけないと予想していなかった税金が発生することがあるので注意が必要です。
親子であっても、住宅購入のための資金援助を受けた場合には、原則として贈与となり、贈与税が賦課されます。一般的な贈与税の税率は高く、例えば、1000万円の贈与を受けると、200万円を越える贈与税が賦課されるようです。
住宅購入資金に関する贈与に関していえば、父母・祖父母等の直系尊属からの贈与は500万円まで非課税とする特例を活用することができます。この特例措置は、平成21年1月1日から平成23年12月31日までの期間限定ですので、今こそ、『援助してもらうチャンス』かも知れません。もっとも、この特例を利用するには、贈与を受けた翌年の3月15日までに購入や新築をし、居住を開始しなければならないとか、過去5年間にご本人や配偶者の持ち家に住んでいたことがない等、一定の条件を満たす必要があります。(詳しくは、国税庁のホームページや専門家へのご相談をお勧めします。)

また、ご両親の中には、子どもの住宅購入資金の援助をしたとしても、子どもに老後の扶養をしてもらうことが期待できない以上、援助した資金を老後までには返して欲しいとおっしゃる方もおられるでしょう。
このような場合は、贈与ではなく、貸金(金銭消費貸借契約)ということになり、お子さんからご両親に対する返済がなされることになりますが、親子間のお金の貸し借りは曖昧な部分が多く、借用証も作らない、返済期限や返済額は余裕があるときの出世払い、返済は振り込みではなく現金払い、というのがほとんどのようです。しかし、このような場合、親子の間では貸金のつもりであっても、第三者(税務署等)から見れば、資金の移動が貸金なのか贈与なのかわかりません。そのため、贈与と判断されて贈与税を賦課される可能性は否定できません。ですので、親子間であっても、贈与と判断されないように、借用証を作成すること、返済期限をきちんと約束すること、返済は銀行振り込みを利用することなど、証拠を残すことが大切になります。
そして税務署では、無利息の場合には、その利息相当額が少額であるなどの場合には課税しないという取扱いをしているようですが、そうでない場合には、一般的な利息相当額部分を贈与として扱うことになっているようですので、両親から多額の資金を借り入れる場合にはその分の利息を支払わないと贈与として税金が賦課される場合もあるので注意が必要です。

このように、法律や課税上は堅苦しい取り扱いになっていますが、実際には、多くの親子はもっとざっくばらんに住宅資金援助や貸与をしているようにお見受けします。もっとも、備えあれば憂いなし。住宅資金調達に関する税金の優遇措置にはほかにも色々ありますので、マイホームという高価な買い物をするのですから、これを機会に予め税金の知識も持っていた方が安心ですね。

林 眞紀世

プロフィール
林 眞紀世 / 弁護士

札幌弁護士会に所属する弁護士。民間航空会社勤務を経て、平成15年から弁護士に登録。平成18年10月からはパークフロント法律事務所を開業。当時は、北海道初の女性弁護士2人の共同法律事務所だったことが話題に。一般の方から企業まで、幅広く一般民事、企業経営に関する事件、親族間の事件などに取り組んでいる。

イントロダクション
法律は難しいとか、法律事務所は敷居が高いなどとよく言われますが、「難しいこともできるだけわかり易く」をモットーに日々取り組んでいます。このコラムでは、住宅や不動産などにまつわる法律問題にわかりやすく触れていきたいと思います。