第7回 木造住宅の耐震診断ってどんなことするの?


2018年9月6日に北海道胆振東部地震が発生しました。
最大震度は、震度階級で最も高い震度7で、北海道では初めて観測されました。
厚真町では広い範囲に大規模な土砂崩れが発生しました。
さらに液状化現象とみられる異常が、北海道内の5市町村で発生したと言われています。
地震の影響で建物の被害もかなりでています。

大きな地震が発生すると、やはり「大丈夫なのかな?」と心配になりますよね。今回は木造住宅の耐震診断についてのお話しです。

新耐震基準だから安心?


耐震基準は1981年の建築基準法の大幅な改正で「①震度5強でほぼ無傷 ②震度7強の揺れで倒壊・崩壊しないこと」が求められています。
この1981年を境に「旧耐震基準」「新耐震基準」の建物という表現がされます。

①震度5強でほぼ無傷 ⇒ ほぼ、と言うことは何らかの損傷はあることになります。
損傷の程度までは明確にされていませんが、修繕工事で生活に支障のない状態に戻せる
可能性がある状態だと考えたほうが良いでしょう。

②震度7強の揺れで倒壊・崩壊しない ⇒ この状態は人命を守ることが最優先で、建物
の中にいる人が安全に避難できる時間を確保することが目的と考えます。
この状態は、建物の修繕、修復を期待できる状態ではない可能性が高いです。

つまり「新耐震基準で建てられた家だから大丈夫!」とは一概には言えないのです。

木造住宅の耐震診断


では、住宅の耐震診断とはどんなものなのか。
既存の建物で旧耐震基準で設計されて耐震性能を保有していない建物を、今の構造基準(新耐震基準)で耐震性が有るか無いかを確認することです。
診断を行う方法はいくつかありますが、今回は国交省大臣の認定を受けた耐震診断法である一般診断法を例に説明します。

耐震診断は所有者等による建物チェックを活用することもあります。
詳細な診断を希望する場合は、専門家による現場調査を含めた耐震診断を依頼することもできます。
現場調査に加え、所有者等へのヒアリングや情報収集(図面などの資料)など行い、壁や筋かいの耐力、配置のバランス、金物の仕様などから上部構造評点という点数を求めます。
そこにひび割れなどの劣化の状況、雪の荷重など低減係数をかけたものが診断結果となります。
評点1.5以上で倒壊しない、0.7未満だと倒壊する可能性が高いという判定となります。

国土交通省住宅局監修、「一般財団法人 日本建築防災協会」が作成した「誰でもできるわが家の耐震診断」では、一般の住宅の所有者・居住者向けにわかりやすいリーフレットや、セルフチェックがインターネットで簡単にできる診断ページもありますので、楽しみながら住宅の耐震性について身近に感じていただけると思います。


住宅購入の際や、ご自宅がちょっと心配、と思われるのでしたら一度、住宅の耐震性能をセルフチェックしてみてください。
疑問や不安を感じられた方は、市町村や都道府県の建築行政担当部局にお問い合わせください。

大林 厚志

プロフィール
大林 厚志 / 一級建築士・一級建築士施工管理技士

株式会社北工房執行役員、一級建築士。現場監督経験後、設計事務所にて住宅・商業施設等の設計・監理業務に携わる。現在はホームインスペクター(住宅診断士)や住宅性能評価員としても活躍。住宅関連セミナー・建築士資格試験予備校等、講師経験多数。

イントロダクション
「家」は生活に欠くことができません。家庭環境、転勤、資産や目標など「家」を求める理由は人それぞれですが、誰もが幸せになりたいという夢をお持ちです。北海道の建築に携わって30年。新築設計だけでなく、ご自宅のトラブルなども含め、さまざまな「家」に関わるご相談を承ってきました。そんな私たちだからこそお伝えできる「幸せになるための家づくり」とは。