第12回 引き渡し後の補修はアフターサービス保証で賢く計画的に

2月、3月は新築住宅のお引き渡しが多い時期。そろそろお引越しも落ち着き、新生活を始められている頃でしょうか。
引き渡しを受ける前に『内覧会(竣工検査)』をされたと思いますが、施工業者や不動産業者から専門用語の多い説明を一度に受けて、「では引渡書にサインして下さい。」とよく分からないままお引き渡しが終わっていた、という話がよく聞かれます。

内覧会時には気づかなかった不具合が実際に生活を始めてみると出てくることもあり、どこまで直してもらえるものですかとご相談をいただくこともあります。
無償で直してもらえるものもありますので、賢く計画的にご自宅の補修と、それに必要な定期点検を進めていきましょう。

新築住宅の「保証」って?

新築住宅では引き渡しから10年間「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」に重大な瑕疵が見つかった場合、売主は補修や損害を賠償する責任があります。
ただ実際はもっと比較的軽微な不具合が見つかることが多く、施工上の不具合であれば、一定期間無償で補修や修繕をしてもらえるアフターサービス保証がついていることが多いです。
引き渡し書類又は契約関係書類に保証期間が記載されていますので、取り決めについてよく確認しておくとよいでしょう。

また、施工業者による定期点検もあります。1か月点検、3か月点検、6か月点検、そして1年点検。2年点検がある場合もあります。
ここで大事なことは点検の前の『セルフチェック』です。事前にセルフチェックをし、不具合箇所や直してほしい部分をまとめておくだけで、定期点検をスムーズに進めることができます。

セルフチェックのポイント

<外周り編>
・外壁に隙間やふくらみはないか
・基礎にシャープペンシルの芯が入るような幅のひび割れはないか
・窓周りのコーキングに浮きや剥がれはないか
・玄関ポーチなどのタイルに浮きや剥がれはないか
タイルの浮きのチェックは、傘の先などでタイルをなぞってみてください。浮いている部分はカラカラと乾いた音がしますので、音の違いでチェックができます。
1年のうち、少なくとも降雪前と雪解け後には建物全体を見て回りましょう。冬季間に工事が行われた場合、雪が解けてから工事のゴミが出てくることもあります。

<室内編>
・床や壁・天井との取り合い部分に隙間ができていないか
・歩いた時に床や階段に変なきしみ音がしないか
・窓やドアの開閉に問題が無いか
・エアコン、ボイラー等の設備機器は問題なく動作しているか
・排水管の漏水はないか
排水管の漏水についてはポタポタと垂れているのを想像する方が多いかもしれませんが、実際はにじむように漏れてくることが多いので目視では確認がしづらく、直接手で排水管を触って確認してみてください。

外回り、室内いずれも、特に問題がなかった部分も写真に残しておくことをおすすめします。
定期的に確認する事によって、「半年前よりひび割れが大きくなっている」など不具合の進行や変化に気付くことができますし、その記録をもとに施工業者へ補修・修繕を依頼することができます。

プロによるホームインスペクション(住宅診断)も上手に活用

アフターサービス保証期間を過ぎてしまうと有償での補修となります。
補修内容にもよりますが、僅かなクロスの剥がれや建具の調整でも、職人さんに来てもらうと材料費なども含め2~3万円はかかります。補修箇所が多数ある場合や、少しの手直しでは済まない場合は、さらにまとまった金額がかかることもあります。

せっかくの保証ですので、切れてしまう前に不具合箇所をリストアップしておく必要がありますが、自分でひとつひとつ確認し、記録していく作業はとても骨の折れる作業です。また、気になる不具合箇所があるのにも関わらず、施工業者の点検では「問題ありませんでした」と言われてしまったら…?

そこで活用していただきたいのが「ホームインスぺクション(住宅診断)」です。建物に精通した専門家が、客観的な目線でご自宅の調査・報告をしてくれます。
サービス内容にもよりますが、なかなか素人では確認が難しい屋根裏や床下の調査をしたり、専門家だからこそ気づく不具合もあるかもしれません。
インスペクションは中古住宅の売買取引時に行う事が多いイメージをお持ちかと思いますが、そんなことはありません。自宅の定期的な点検にも大変有効にご活用いただけるサービスです。

アフターサービス保証の期間と内容の確認を!

アフターサービス保証は売主や施工業者が独自に設定しているものなので、期限や保証の内容が各社で違いますし、保証期限についても期限切れ前に売主から事前にお知らせが必ず来るわけではありません。過ぎてしまってからでは遅いため、ご自身で期限や内容を確認しましょう。

ご自身で行う定期的なセルフチェックと、プロが行うホームインスペクション(住宅診断)などをうまく組み合わせて活用し、計画的にご自宅の定期点検・補修を行いましょう。適切な時期に適切なメンテナンスを行うことにより修繕費用の節約にもなりますし、大切なご自宅に長く快適に住まうことができます。

大林 厚志

プロフィール
大林 厚志 / 一級建築士・一級建築士施工管理技士

株式会社北工房執行役員、一級建築士。現場監督経験後、設計事務所にて住宅・商業施設等の設計・監理業務に携わる。現在はホームインスペクター(住宅診断士)や住宅性能評価員としても活躍。住宅関連セミナー・建築士資格試験予備校等、講師経験多数。

イントロダクション
「家」は生活に欠くことができません。家庭環境、転勤、資産や目標など「家」を求める理由は人それぞれですが、誰もが幸せになりたいという夢をお持ちです。北海道の建築に携わって30年。新築設計だけでなく、ご自宅のトラブルなども含め、さまざまな「家」に関わるご相談を承ってきました。そんな私たちだからこそお伝えできる「幸せになるための家づくり」とは。