第3回 家ができるまで〈設計事務所に依頼した場合〉後編

前編は、①ご相談受付から④実施図面の作成まで解説しました。
後編は、お引渡しまでの流れをご説明します。

⑤確認申請

実施図面が出来上がってから確認申請手続きを行います。
確認申請:設計された物件が建築基準法その他関係法令に適合しているか行政機関若しくは民間検査会社で申請書類・設計図の確認を行うこと。

⑥工務店へ見積り依頼・見積りチェック

3社~5社程度に同時・同条件にて見積もりを依頼します。お客様が依頼したい工務店などがあれば、事前にお知らせしておくとよいでしょう。
ここで大事なのが、「同時・同条件で見積りする事」です。
見積り期間は、一般的な木造住宅で2~3週間程度です。
その後、各見積書の内容を比較確認します。適正な見積内容か、設計図の内容と異なっていないか等のチェックです。

見積り金額がお客様の資金計画を超えていた場合、工務店と交渉し予定額に近づける努力をします。これは単なる値引き交渉ではなく、技術的あるいは工法の検討をしながら行います。
VE(value engineering)といい機能的価値を低下させずにコストを抑える方法です。
だだし、それでも予定額に近づけない場合、部分的に設計変更も行いながら納得できる工事費となるように交渉します。

設計事務所に業務を依頼するメリット
■複数社に見積り依頼し、適正な価格競争を促す
■その上で再度、設計内容と工事金額の調整をする。

⑦図面の訂正・納図

設計内容と工事金額がお客様・工務店双方納得いただけたところで、設計変更があった場合、設計図の修正をします。できあがった設計図をお渡しして納図となります。

⑧工事請負契約

最終図面が完成すると、工務店との工事請負契約を締結することになります。お客様と工務店だけでなく設計事務所も立会います。契約締結後の設計内容の変更は追加金額が発生することが多いので、ご要望はできるだけ設計に反映できるタイミングまでに伝えるとよいでしょう。

⑨工事着工~お引渡し

現場で行われる検査やイベントをご紹介しますね。

●地鎮祭:省略される方もいらっしゃいます。代わりに入居前にお祓いをされる方もいらっしゃいます。

●遣り方・地縄張り:建物の位置、基礎の位置(基礎の各通り位置)そして基礎の高さを決める「遣り方」という板を打つ作業を行います。これが基準になって建物が建ちますので、とても重要な作業となります。
地縄張りという、建物の形などがわかるように縄で印をつける作業も行い、お客様・工事関係者(責任者)・設計者が立ち会い確認することになります。ここで確認していただき着工になると基本的に変更はできません。

●地盤確認・杭の施工状況:※ここからは設計事務所がお客様に代わってチェックします。
地盤データーと実際に掘った状態の地盤(設計通りの深さになっているか等)を確認します。杭の施工状況(所定の材料・寸法・本数・位置等)の確認もします。

●基礎(配筋・型枠)検査:コンクリート打設前に、基礎工事で重要な鉄筋の種類・本数・ピッチ等の確認をします。型枠の寸法を確認します。

●建て方(上棟):柱・梁の寸法・金物の種類・使用位置など設計図と照合しながら確認します(木造の場合)。基礎の検査と建て方検査が「家の安全」を確保する、最も大切な検査となります。
お客様の希望によっては「上棟式」など行う場合もありますが、最近ではあまり行わなくなったようですね。
屋根・外壁・内装検査:外装材・屋根板金の下地・内装の仕上げ等も設計図と照合し確認します。

●竣工検査:竣工検査は、お客様・設計者・施工者とで行う最後の検査です。ご入居されてから時間が経過した後に仕上げ等に不具合などを発見しても、それが施工者の責任なのか、お引渡し後にお客様によってされたものなのか、判然としない場合があります。必ずご自身の目でチェック確認いただくことが大切ですね。
この段階で不具合などがあった場合は、後日補修・手直し工事があり再度確認していただきます。

●お引渡し:お引渡し時には、鍵や保証書、登記に必要な書類などを受け取ります。この日からお客様の「家」となります。
お引渡しのタイミングで取り扱い説明があります。一度にたくさんの説明がありますので、基本的な説明を受けて解らない部分は後日問い合わせでも良いかもしれません。
工事着工からお引渡しまで、約4ヶ月程度が一般木造住宅の標準的な工期ですが、最近は建設業界も人手不足で、工期も少し余裕をみたほうがいいかもしれませんね。

家ができるまで〈設計事務所に依頼した場合〉前編・後編 いかがでしたか?
実際、ハウスメーカー・工務店担当者に希望を言っても予算的にムリですね~とか法的にできませんね~とかムズカシイ言葉をたくさん言われて、そっか~ダメかぁ~ってなっちゃいますよね。
そんな時あなたの味方となってくれる「建築のプロ」がそばにいてくれたら?
当然全てができるようになる訳じゃありません。ただ、ちゃんと納得ができる説明を聞くことができるはずです。

大林 厚志

プロフィール
大林 厚志 / 一級建築士・一級建築士施工管理技士

株式会社北工房執行役員、一級建築士。現場監督経験後、設計事務所にて住宅・商業施設等の設計・監理業務に携わる。現在はホームインスペクター(住宅診断士)や住宅性能評価員としても活躍。住宅関連セミナー・建築士資格試験予備校等、講師経験多数。

イントロダクション
「家」は生活に欠くことができません。家庭環境、転勤、資産や目標など「家」を求める理由は人それぞれですが、誰もが幸せになりたいという夢をお持ちです。北海道の建築に携わって30年。新築設計だけでなく、ご自宅のトラブルなども含め、さまざまな「家」に関わるご相談を承ってきました。そんな私たちだからこそお伝えできる「幸せになるための家づくり」とは。